日本の労働生産性が諸外国に比べて低いという事実をご存じでしょうか?
OECD(Organisation for Economic Co-operation and Development:経済協力開発機構)のサイトに、いろいろな統計資料があるのですが、先進国各国の「労働生産性」の比較では、日本は最下位なのです。
日本人は勤勉なイメージがあったので、労働生産性はもうすこしマシかと思っていたのですが・・・、何かがおかしいですね?
今回は日本の労働生産性が低い理由について見てみましょう。
日本の労働生産性はOECD加盟国35カ国中25位の衝撃!
まず、論より証拠。こちらのデータをごらんください。こちらは「OECD 加盟諸国の国民 1 人当たり GDP と労働生産性」を示した物です。
先進7カ国では、最下位です!
さらに、日本の労働生産性は、財政破綻したギリシャよりも低いというのです!一体どうしてなのでしょう? 不思議だと感じませんか?
労働生産性の算出方法?
まず、労働生産性の算出方法を確認してみましょう。
労働生産性は、以下の式で算出されます。 労働生産性 = 国内総生産(GDP)÷ (労働者数 × 労働者の平均就業時間)
労働生産性を上げるためには、アウトプット「国内総生産(GDP)」を増やすか、インプット「労働者数x労働者の平均就業時間」を減らせば良いということがわかります。
一人あたりの国内総生産は?
では最初に、日本の一人あたりの国内総生産(国内総生産÷労働者数)を観てみましょう。
一人あたりの国内総生産は、以下の式で算出されます。 一人あたりの国内総生産 = 国内総生産(GDP)÷ 人口
日本の順位は18位と、やはり芳しくない結果ですね。日本のGDPは、世界三位ですが、人口がフランス、ドイツなどと比べると2倍近いことも順位が低い要因の一つですね。
労働者の平均就業時間は?
それでは、労働者の平均就業時間を観てみましょう。
過労死が大きなニュースになるなど、日本人は長時間勤務しているイメージがありましたが、以外と日本の平均就業時間は少ないですね。
年間1713時間を12ヶ月で割ると、月間の就業時間平均は143時間。
月に20日働くとすると、一日平均7.13時間ですね。
この数字だけをみると、日本人は残業をほとんどしていないという印象を受けますが、統計資料には各国ごとの集計方法の差異や、データの精度のばらつきがあるため、参考値程度に見ておいた方がよさそうです。
日本の労働生産性を向上するために必要な事とは?
これまでにわかった事をまとめてみましょう
- 国内総資産(GDP)は世界3位だが労働者数は多い
- 労働者の平均就業時間は平均的
では、なぜ日本の労働生産性が主要先進7カ国の中で最下位になってしまうのでしょうか?
労働生産性の算出方法を、もう一度見てみましょう。
労働生産性 = 国内総生産(GDP)÷ (労働者数 × 平均就業時間)
労働生産性を上げるためには・・
- 国内総生産(GDP)を上げる
- 平均就業時間は増やさない
が必要ということになります。
逆にコントロールが効かないものは、労働者人口の減少です。
- 労働者数は今は多いがこれから減少する
労働者数については、2004年12月のピークである1億2693万人から、毎年減少の一途を辿っています。
そのため、労働生産性を上げて、少ない労働力で効率良く稼ぐことが必要であり、「働き方改革」の推進が必要とされています。
日本の労働生産性が、主要先進7カ国の中で最下位な理由?
日本の労働生産性が低い理由は他にもあります。それは、日本の労働人口の高齢化に伴う労働生産性の低下と、日本の産業構造にあります。
理由1:日本の労働者の年齢層は諸外国と比較して高いため、労働生産性が低くなる
下のグラフをご覧ください。こちらは、65歳以上の男性の労働力率を示しています。
労働力率とは、15歳以上の就業者と完全失業者の全人口における割合のことです。
労働力として経済活動に参加している者の比率
ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
このグラフは65歳以上の人々が労働力率に占める割合を示しています。
この比率が高いほど、労働力の平均年齢が高いということになります。
ご覧のとおり、日本は65歳以上の労働力率が、先進諸外国と比べて非常に高いということがこのデータから判ります。
データブック2017 国際労働比較 – 独立行政法人 労働政策研究・研修機構
それでは、年齢が高い労働者の労働生産性は低いのでしょうか?
これは個人差があるため一概には言えないはずですが、労働生産性は40台をピークにして、緩やかに下降するというデータがあります。
データブック2017 国際労働比較 – 独立行政法人 労働政策研究・研修機構
これらのデータからみると、労働者の年齢層が高い日本は、そうではない他の国々と比較して労働生産性が低くなるということになります。
理由2:我が国では労働生産性が低い産業に多くの労働者が従事している
日本の労働生産性が低い理由は、労働者の年齢層が高いということだけではありません。産業構造の違いも大きな理由の一つです。
下記は、日米の産業別の生産性を示した物です。化学と機械を除いたすべての産業において、米国と比較した生産性は15~70%も生産性が低いことがわかります。
農林水産業に至っては、米国の1/20程度という惨憺たる結果です。諸外国では広大な畑をトラクター等の大型機械を使って効率的に経営しているのがあたりまえですが、日本では個人農業が少ない作付け面積で野菜を栽培しているというケースがまだ多いのが現状です。
まとめ
今回は、日本の労働生産性が先進諸外国の中で最下位である理由についてご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?
労働生産性 = 国内総生産(GDP)÷ (労働者数 × 平均就業時間)
今回参照した様々なデータからは、日本の労働生産性を阻害する要因がいくつか見えてきました。
理由1:高齢化による労働生産性の低下
- 日本の労働者数は、現時点では他国と比べて相対的に多いが、労働生産性が高くはない
- 各々の労働者の労働生産性が高くない理由は:
- 日本の労働者は65歳以上の労働力率が極めて高く、他国と比べて労働力の高齢化が進んでいる。
- データによると、50歳以上から労働生産性は緩やかに低下する。
理由2:日本の産業構造的に、労働生産性が低い業種に多くの労働者が従事している
- 産業別生産性を日米で比較すると、日本が米国に優っているのは「化学」と「機械」のみ。
- 「化学」「機械」に従事しているのは、全体の5%以下で、残りの95%は米国と比較して圧倒的に労働生産性が低い分野に従事している。
データを分析するにつれて、現在の日本の深刻な状況が見えてきました。
今後は、少子高齢化による労働力低下も加速する中、より少ない時間(インプット)で、効率的に成果(アウトプット)を産み出せるよう、働き方改革を推進することが求められます。
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