「神エクセル」(または、ネ申エクセル、方眼紙エクセル、神Excel)という言葉はご存じでしょうか?
これは、エクセルの本来の使い方ではなく、紙の書式をそのままエクセルに方眼紙状に再現してしまったモノで、はっきり言ってしまうと、日本独自の悪習です。
その起源は定かではありませんが、お役所ではまだ多用されているケースが多いようです。
ワークスタイル改革(働き方改革)では、生産性の向上を目指して、より少ない時間(インプット)で、より多くの成果(アウトプット)を出すための様々な取り組みが推奨されています。今回ご紹介する「神エクセル」は、本来はやらなくても良い”無駄な事”に時間を費やしているという意味で、日本の労働生産性が低い理由である、様々な「悪い慣習」の一つです。
今回は、この「神エクセル」が労働生産性の低下を招く元凶である3つの理由をご紹介します。
日本に蔓延する「神エクセル」信仰の恐怖
この「神エクセル」の問題が根深いのは、それを信仰して崇めている一部の信者が存在するからなのです。
本来のあるべき使い方を無視して、エクセルをワードプロセッサーの代用として使用することが日常化してしまい、知らない間に非効率な仕事のやり方を何年も、下手をすると何十年も続けてしまったのが理由です。
つい先日、はてなブックマークの上位にランキングしていたある記事に目がとまりました。
はてなブックマークで注目を集めていた「神エクセル」
注目を集めていた記事では、システム開発テンプレート集と題して、開発プロジェクト管理用のテンプレートを公開しているモノでした。
問題は、そのテンプレートすべてが、今回とりあげた「神エクセル」だったのです。
その記事の作者さんは、SE歴15年だとか・・。
他の記事を観てみると、どうやら今回のテンプレートは”ネタ”として公開したのではなく、完全に善意で、彼が使えると信じてやまない愛用のテンプレートを公開したのでしょう。
もし、本当にそうだとしたら、この作者の方の抱える闇は深いです!
SE歴15年を自称するブロガーが誇らしげ?に公開していたテンプレを観て、人々は恐怖した!
いくつかのテンプレートは、よく見る課題管理表のようなモノだったのですが、この議事録を見て驚愕してしまいました。
議事録!
これがエクセルである必要は、1ミリもアリマセン!
一体どうやって入力するのでしょうか?
まさか、1セルに一文字入力するとか?? 編集時に、複数文字を挿入しようものなら、目も当てられない惨事になります!
テキストオブジェクトをこの上におくならば、別にワードで作成しても良いのではないでしょうか?
興味深い、はてぶな人々の反応
この記事に対する、はてなブックマーク上でのコメントが興味深いです。
揶揄している方々
この方々は、神エクセルの危険性を理解した上で、揶揄している人や、本気で日本のIT業界の行方を憂いでいる人達ですね。
信者な方々?
問題はこちらの方々です。おそらく、同じやり方をしている人。ネタでなければ、本当にありがたがっている人。そして、揶揄している方々が何故そうしているのかを理解できていない人・・。
恐ろしいことです・・。
「神エクセル」で、巨大なガントチャート(WBS)を管理しようとする人達がいた
そういえば、以前公共のシステム導入案件の支援をしていた際に、日本を代表するIT企業からPMとして派遣された方が、巨大なガントチャートを、なんとエクセルで作成していました。
本来、WBSが1000を超すようなものは、Microsoft Projectなどの専用のツールを使うべきです。
エクセルをつかっていた彼は、スケジュール修正が入るたびに、タスク間の依存関係などを手動で修正していました。
A3にプリントアウトすると数十枚に及ぶようなガントチャートは、もちろんミスだらけ。
当然ながら、そのプロジェクトの品質も”推して知るべし”でした。
エクセルで巨大なガントチャートと格闘する彼を見て、とても残念な気持ちになりました。
- WBSとは?
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WBSとはWork Breakdown Structureの略で、プロジェクトのタスクを個別のタスクに細分化した構造図です。
どんなに巨大なプロジェクトでも、実行可能なタスクに細分化することで、進捗を管理することができます。
WBSは、プロジェクト計画および、進捗管理には必須なツールです。
ったことを思い出したのです。
WBSとは?WBSとはWork Breakdown Structureの略で、プロジェクトのタスクを個別のタスクに細分化した構造図です。どんなに巨大なプロジェクトでも、実行可能なタスクに細分化することで、具体的な作業に着手できるわけです。このWBSは、プロジェクトの計画および、進捗の管理には必須なツールです。ガントチャートは、このWBSにスケジュールとタスク感の依存関係を記載したものです。
神エクセルが日本の労働生産性低下を招いている元凶である3つの理由
以前「日本の労働生産性が低い」という記事を書きましたが、この神エクセルがその理由の一端を垣間見えたように思えます。
理由1:神エクセルのデータはデータ処理に不向き
先の議事録の例もそうですが、もしかすると一セルに一文字をいれて喜んでいる人が居るわけです。しかし、そのようなデータは再利用が著しく困難になってしまうのです。
例えば、エクセルファイルをツールで読み込む際には、セル毎にデータを取り込むわけですが、一セルに一文字入力されるようなデータを処理するには、読み込んだセル内の文字列を連結する必要があるなど、余計な手間がかかります。
さらに、エクセルの上に文字オブジェクトを被せて、その上で文字を入力する場合なども、ツールからのデータ取り込みが無用に複雑になってしまいます。
理由2:入力に手間がかる
仮に、一セルに一文字を入力しなければならないとしたら、文字入力の手間がものすごくかかります。
今回のエントリーのために作成した、記事冒頭に掲載したアイキャッチ画像では、神エクセルを再現するために、一セルに一文字ずつ入力してみました。
改めて、神エクセルへの入力が、無駄に時間がかかる作業であることを再認識しました。
理由3:時間をかけて過度に複雑な書式を作ること自体が無駄
神エクセル自体、ITリテラシーがそれほど高くない人が、作り上げてしまった日本固有の悪習です。
そもそも、お役所や金融機関の書式の使いにくいこと!
書式をいろいろな用途に使える様に汎用化しすぎて、無駄に複雑化しているというのがその理由です。
神エクセルは、その無駄に複雑化している書式を、そのままの形でコンピューター上に取り扱うことのみを目的としているため、使い勝手や、作業の効率という点は、あまり顧みられなかったのでしょう。
まとめ
もはや、ファイル管理をしている時代ではない
これからの時代、ファイル管理自体をなくす必要があります。
ファイルベースで情報を管理していると、以下に示す様々な弊害があるからです。
- ファイルの管理プロセスが必要
- ファイル名の命名規則
- ファイルの格納場所
- リグレッション(先祖返り)をなくすために、
- バージョン管理システム、もしくは手動のプロセスが必要
- ファイルを上書きされないように、ファイルのロックや、チェックアウト、チェックインといった、権限管理の仕組みが必要
データはファイルベースではなく、システム上で管理したほうが、無駄な作業を排除できます。
あえて言おう、「神エクセル」に明日はないと!
神エクセルは、日本固有の悪習であることは繰り返しお伝えしてきました。もちろん、入力しやすい神エクセルもつくることができるとは思いますが、今回ご紹介したような、議事録をエクセルで作ってしまう人が、ある一定数以上存在してしまっている時点で、エクセルを本来以外の用途で使うことに疑問を持たなければなりません。
常に、毎日のタスクを見直し、無駄を排除する心構えが必要ですね。
再度、「神エクセル」をやめる理由
神エクセルを是とする信者の方々に対しては、神エクセルを辞めるべき理由として以下をお伝えします。
データとしての再利用が難しい
理由は前述のとおり、データを読み込むツールが無駄に複雑化してしまうからです。不可能ではアリマセンが、そんなツール開発にかける工数が無駄だということです。
複雑な書式を作って、メンテすること自体が無駄(な可能性が高い)
繰り返しになりますが、その複雑な書式を維持する工数が無駄である可能性が高いと考えます。他にシンプルなやりかたがないか?自動化するなど、常に生産性を上げることを考えましょう。
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