フリーアドレスオフィスとは、特定の固定席の替わりに、共有席を置いて、どこでも自由に仕事が出来るオフィスの事です。
僕は外資系IT企業に勤務していた際に、フリーアドレスオフィスを利用していた経験があります。そのオフィスは、当時としては最先端のデザインで、数多くの社外からの見学者が毎日のように訪れていたことを覚えています。
今回は、自身でフリーアドレスを実践的に利用して感じた、メリットとデメリットについてお話したいと思います。
[toc]
フリーアドレスオフィスの目的
オフィススペースの有効利用
フリーアドレスオフィスの最初の目的は、オフィススペースの有効活用です。
特に営業職の場合は、外回り等、出張が多いことから、オフィスの在席率は平均すると全職員の50%か、それ以下であることが多いと思います。皆さんのオフィスではいかがでしょうか?
誰もがどこの席でも利用できるフリースペースオフィスを導入すれば、全職員の50%のスペースだけを確保すれば良いのでコスト削減が期待されます。また、減らした固定席が利用していたスペースを有効利用することで、余ったエリアに打ち合わせブースを設置するなど、オフィス環境の抜本的な改善も行えます。
コミュニケーションの活性化
常に同じ人たちが固まって座る固定席では、なかなか他の部署の人と話す機会がありません。そこで登場するのがフリーアドレスです。
毎日、隣の人が変る環境下で働くことで、社内の知り合いが増え、結果として社内のコミュニケーション活性化が見込まれています。
フリーアドレスオフィスのメリット
生産性の向上
用途に応じて、好きな場所で働くことができれば生産性の向上が期待できます。
他の人とディスカッションしたいとき、集中してアウトプット資料を作成したいとき、それぞれ目的によって最適な環境は変ります。前者ならば、複数人が座れる広い机、後者は雑音をシャットアウトできて、他人の視線を感じにくい集中ブースを利用すれば仕事もはかどるはずです。
必要な時にすぐに会議が行える
これも生産性の向上に関連しますが、いつでもどこでも会議ができるスペースがあれば、会議室の空き時間を待つ必要はありません。いますぐに必要な打ち合わせを実施して、仕事を進めることができます。
これまで多くの企業・団体の働き方を観てきましたが、共通して言えるのは、会議室不足はオフィスの生産性向上を阻害している大きな要因の一つです。
空き会議室が無いことで、会議を先送りにせざるを得ない・・、そのために生じている生産性のロスは計り知れません。
プロジェクトルームとして機能
同じプロジェクトに従事する仲間で同じエリアに座れば、その場所がプロジェクトルームとして機能します。いちいち会議室を予約する必要はありません。
会議室が空いていないために、プロジェクトミーティングを必要な時にすぐに実施できません。フリーアドレスオフィスならば、いつでも必要なタイミングで会議が行えます。
僕が体験したフリーアドレスオフィスの大きな弊害
中途でフリーアドレスの会社に入ると「疎外感」がMAXになる
僕がフリーアドレスを初めて体験した、外資系IT企業では、外回りが多い営業やコンサルタントの固定席はありませんでした。しかも、あるときから社員数が一気に増えたこともあり、オフィスの在席率は常に75%~100%という比率に! 結果的には、クライアント先からオフィスに戻ってきても、席が空いていないという事態がしばしば発生することになってしまいました。
このような環境に中途採用で、入社したら大変です。
なぜなら・・
目の前に座っている人が、どこの誰なのか分からない
面識が全く無い人がたくさんすわっているのですが、その人が誰なのか判らないため、なかなか知り合いが増えません。固定席ならば、座席表から名前と顔を一致させることができますが、これには本当に困りました。
相談したい人が行方不明・・
仕事の事で相談したい人の行方を捜すのが一苦労でした。その人の予定表では、どうやら社内にいる様子なのですが、一体どこのフロアのどのエリアにいるのか・・さっぱり判りません。結局はメッセージングアプリを使ってコンタクトを取っていました。
オススメ、フリーアドレス導入方法
フリーアドレスを検討する上で重要なポイントをご紹介します。
部署毎のフロアでゾーニングする
これも組織の規模にもよりますが、主として利用するフロアを部署毎に定めておくと良いです。すくなくとも「営業の人はこの辺り」という形にしておけば、一緒に仕事をする人達を探しやすいでしょう。もっともフリーアドレスなので、どこで仕事をするのかはその方次第ですので、あくまでも目安という形がよいでしょう。
人を探すためのITツールの整備
僕も苦労しましたが、必要な人をすぐに探せないという弊害が出来るだけ発生しないように環境を整備する必要があります。ITツールを上手く利用することで、どこでも働けるという自由度を保ちながら、必要な人をすぐに探し出すことができます。
メッセージングアプリ
すでに、LINEや、Facebookのメッセンジャーアプリなどでおなじみのメッセージングアプリですが、企業向けのアプリが数多くあります。これらのメッセージングアプリを上手く活用することで、いつでも、どこでも、一緒に働ける環境を作ることが可能です。
人の居場所を見える化するツール
Wifiのアクセスポイントから、現在居るオフィスの名称だけではなく、フロアーとエリアまでマップ表示するツールを観たことがあります。このツールを使うと、だれがどこに居るのか一目瞭然でした。ただ、監視されている感が心地よいものではありませんでしたが・・。
フリーアドレス導入には、労務管理ルールの改訂が必須
自席を無くして、フリーアドレス化することのメリットを享受するためには、それをサポートする労務管理ルールの改訂が必須です。
従来の固定席ならば、誰が何時までオフィスで勤務していたのかは把握するは容易でしたが、(特に大きなオフィスでは)フリーアドレス化すると勤務時間の把握が困難になります。そのため、フリーアドレス化を導入する際には、オフィスワーカーの評価方法を成果物重視に変える必要があります。つまり、何時間オフィスにいたかを評価するのではなく、どのような成果を出したのかを評価できるようにする必要があるわけですね。
まとめ
いかがでしたでしょうか? フリーアドレスオフィスを導入している企業に勤務した経験から、そのメリット、デメリットについてご紹介しました。
フリーアドレスオフィスの導入は、単にオフィスのレイアウトを変えれば良いというわけではありません。その前に、企業風土も変革することが必須なのです。
日本国内の労働力人口が減少するこれからの時代は、業務効率を向上することが必須ですが、そのためにも、より多くの企業・組織において、「短時間で成果を出すことを是とする風土」を醸成する必要があります。そのためには労務管理ルールを勤務時間ではなく、成果ベースで評価するように変える必要があります。
それが実現出来て、はじめて「いつでも、どこでも働ける環境」を活かせる環境となるのですね。
コメント